オフィスデスクの天板高さは、一般に70cmでした。近年では72cmタイプが流通を始めています。フリーアドレスデスクなどは基本的に高さ72cmになっています。 人間の骨格は、脊椎と大腿骨が90°になるように曲げた姿勢を、長時間とり続けられるようにはなっていません。もし座面が水平に近いチェアに着座していた場合、人間の体は腰椎への負担を軽減するため、背骨を丸めた猫背の姿勢を取ろうとするのです。 人間の座る姿勢は一人ひとり異なっています。もし人体を中心にして考えるなら、人それぞれに異なった、チェアの座面高さとデスクの天板高さとがあるはずです。
もしオフィスデスクの天板を上下に昇降させられるのとしたら、オフィスワーカーにとってこんなにありがたい事はありません。しかし、オフィスデスクの天板は長い間、上下昇降するものではありませんでした。オフィスデスクの量産性と強度とがネックになっていたようです。オフィスデスクの天板を上下調整させるのはなかなか容易ではないのです。 2000年代に入って以降、主要メーカー各社とも天板高さ昇降機構を組み込んだオフィスデスクを発売しています。シリーズ名に“UD”の文字が付帯しているオフィスデスクなどです。UDは、ユニバーサルデザイン(Universal Design)の略です。 天板高さが上下昇降調整できるタイプのオフィスデスクは、エルゴノミクスデスクとも言います。
“エルゴノミクス”という単語を日常的にしばしば目にするようになりました。日本語で「人間工学」と訳されるこの言葉はギリシャ語に由来した比較的近代の造語で、意味は「働くことにまつわる自然的な法則一般」「人間が引き起こすことや現象一般」くらいを表わしています。 エルゴノミクスという概念の発祥は航空分野であるようです。航空機のコックピットでは、些細な事が人命に直結します。パイロットのストレスを細大含めてどれだけ軽減させらせるか、から起こった学問だったわけです。 オフィスチェアには1950年ごろからエルゴノミクスが先行的に広く導入されてきましたが、チェアとデスクとは、揃ってひとつのユニットを形成しているものです。エルゴノミクスチェアとエルゴノミクスチェアとが揃えば執務にかかるストレスは大きく軽減されるでしょう。