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オフィス辞典

人工皮革について

 人工皮革と合成皮革は合わせて人造皮革とも呼称されます。人工皮革と合成皮革の違いですが、人工皮革とは「不織布の布地に合成樹脂を含浸させたもの」、合成皮革とは「織編布の布地に合成樹脂を圧着させたもの」になります。平たくいいますと、人工皮革は合成皮革より厚みがあり、その厚みを活かした立体構造になっているのです。構造上、人工皮革の方が強度が高いのはもちろんですが、人工皮革はより天然皮革に近しい作りになっています。なお、合成皮革を合皮、人工皮革を人皮と略する呼称もあるようです。  人工皮革は天然皮革の構造を模して開発されています。天然皮革のコラーゲン繊維構造に似たマイクロファイバーの三次元不織布に合成樹脂を絡ませる事により、天然皮革に近しい一体感を再現しています。人工皮革・合成皮革はアジア諸国・欧米・オーストラリア・ブラジル・南アフリカなどで生産されており、なかでも中国を中心とするアジア諸国で世界の80%が生産されているといわれています。

人工皮革の特徴について

 人工皮革は不織布にポリウレタン溶液を含浸・湿式凝固・乾燥させて形成します。この際、空隙を多数に有する多孔構造のポリウレタン層“ミクロポーラス層”が形成され、合成皮革よりも天然皮革に近い柔軟な風合いとボリューム感を出します。ポリウレタンは結晶性のハードセグメントと非結晶性のソフトセグメントとが島と海とのように相分離する構造を持っており、天然皮革と類似の弾性と柔軟性を発揮します。  人工皮革・合成皮革に用いられるポリウレタンは一般に、ポリオール・イソシアネート・鎖伸長剤などを溶剤中でウレタン化反応させる事により製造されます。ポリオールやイソシアネートには種類があり、これらの組み合わせによりポリウレタンの性格が定まります。ポリウレタンの性格は耐光性・耐光変色・耐熱性・耐加水分解性・低温屈曲性・耐薬品性・接着性・価格などで表現されます。  人工皮革は天然皮革と比べて安価に安定的に生産できる他、汚れやキズに強くメンテナンス性も高いという大きなメリットがあります。その一方で、天然皮革のように「手入れを怠らなければ10年以上の長期に渡って使用に耐える」という性格は持っておらず、経年による不可逆の劣化は免れません。人工皮革の製品は、期間の長短はあれ、消耗品であると認識する必要があるでしょう。  天然皮革を「メンテナンスにより若返る素材」、布を「年を取らない素材」と呼ぶなら、合成皮革・人工皮革は「汚れない素材」と表現できるでしょう。人工皮革の開発は現在でも発展しています。より長期間使用できる・より天然に近い製品の開発に向けて、日夜研鑽が積み重ねられています。

人工皮革仕様の応接家具について

 主要なオフィス家具メーカーの総合カタログを参照してみると、応接家具の張り地素材として人工皮革は必ずしも普及していない印象を受けます。これは、人工皮革も最先端のものになると天然皮革に比べて安価とはいい難いため、天然皮革も手がけられる主要メーカーにとってはあえて人工皮革を用いるメリットが薄いためと推測されます(ただし、一部メーカーは人工皮革「エクセーヌ」を応接家具の素材として取り扱っています)。  なお、非主要メーカーの総合カタログを参照すると、人工皮革を用いた応接家具の掲載が比較的多いようです。シェアこそ小さいですが、人工皮革という素材を応接家具に用いることへの意欲が感じられます。  ソファへの生地の張り方には、ソファ本体に直接生地を張った「張り込み仕様」と、着せ替え式の「カバーリング仕様」とがあります。張り込み仕様とカバーリング仕様とでは本体のフレームが異なります。張り替えの際は、ソファの画像を業者に添付して見積もりを取ります。再生価格は新品価格の半分以上、再生にかかる期間は1ヶ月以上、が目安です。

おわりに

 人工皮革は、単なる天然皮革の模造品ではありません。自然の産物を人間がコピーする事の困難はご存じの通りです。人工皮革はむしろ、自然を模倣しつつ全く別の進化を進めているように思えます。狭義になりますが、天然皮革のみで張った応接家具を「総革」、天然皮革とその他の素材でコンビ張りにしたものを「本革」と称します。人工皮革の応接セットは、時として「本革」の応接より高価である場合もあるのです。  現在進行形で発展している素材・人工皮革による応接セットを、ぜひご検討くださいませ。

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