英単語で表記すると“partition”です。これを音に即してカタカナで書くと「パーティション」になります。しかし、カタカナ語としてはむしろ、「パーテーション」と表記されたり発音されたりしている事が少なくない印象があります。 英単語の“partition”とカタカナ語の「パーテーション」とがそれぞれさしていたものは、実は、ずいぶん異なっていたのではないでしょうか? 英単語“partition”も現在では日本的な衝立や間仕切りを意味に含むようになってきていますが、これは、日本の「パーテーション」が欧米圏に逆輸入され、定着していったからです。従来、“partition”という単語が主に用いられていたのは、パソコン用語としてでした。ハードディスクの容量・領域を論理的に分割する事を“partition”といったのです。 さらにいうと、欧米圏でオフィスを間仕切りするといえば、従来は、天井までつくハイパーテーションが主でした。また、日本と異なり、欧米圏でパーテーションといえば、必ずしもパネルやスクリーンといった厚みのないものに限る事はなく、本棚のような「家具」をもって“partition”と呼ぶ場合もあるのです。 欧米圏の“partition”は、空間を物理的に区切る、強いパーテーションです。近年になり、日本でよく見られる衝立タイプのローパーテーションの効用が知られるようになり、欧米のオフィスにも導入されるようになったのです。空間を隔絶まではしないのでワーカー同士の距離感が縮まり、コミュニケーションが活発になるのだといいます。
“partition”という単語でweb検索を行うと、結構な割合で、日本の屏風の画像が表示されてきます。屏風のさらに起源はというと、中国の漢の時代にはもう用いられていたという、風除けです。「風を屏(ふせ)ぐ」という言葉に由来しているそうです。 日本のパーテーションは、折りたたみや移動が可能な簡便なものです。空間を強く遮断する性格のものではありません。パーテーションが1枚そこにある事によって、ワーカーたちの意識の上で、空間が区切られるのです。いわば、認識的な間仕切りです。 日本人の身体感覚には、認識的な間仕切りで事が足りたのです。 鳥居や暖簾(のれん)なども、認識的な間仕切りのひとつと考えられます。 これらの事から考えて、屏風や襖などが、折りたたみや取り外しができて移動も簡単という、日本的なパーテーションの起源になったと考えられます。